スーパーで売られている身近な農作物
大手スーパーとのプライベートブランド商品の取扱いや、(株)八社会(関東の私鉄系 スーパーマーケット8社が共同で設立した、共同企画商品の開発を手がける企業)のV マーク商品など、我々の食生活にも身近な存在となったプライベートブランド食品。多種多様な取扱品目がある中で、牛蒡(ごぼう)や里芋、生姜といった土物の農産物に関して、独自のシステムによる安定供給を実現している企業があります。それが、今回取材をさせていただいた株式会社ワタナベ(以下「(株)ワタナベ」)です。
大手スーパーから得られる信頼
成田市川栗に位置する(株)ワタナベ。敷地に入ると、作業着を着た方達が忙しそうに働いている姿が見受けられます。取材を担当していただいた代表取締役社長の渡辺明夫さんによると、牛蒡や里芋などの土物の農産物が、県内、 県外問わず様々な産地から本社や関連会社に大量に集められ、選別や加工を経て、冒頭の大手スーパー等に納品されるそうです。大手スーパーとの取引となりますと、出荷量も数千トン規模と桁違い。30年かけて今の関係を築いたそうです。いかにしてこれほどの信頼を勝ち得ることができたのでしょうか。鍵はどうやら独自の物流システムにありそうです。
安全・安心な農産物の安定供給を目指して~独自の物流システム~
(株)ワタナベは、農産物の集荷販売を目的として、昭和30年に設立されました。 そして、安全な農産物を安定供給するために、以下のような独自の物流システムを形成しました。
生産
農業生産法人「北総愛農会」の設立
安全な農産物を供給するためには、徹底した管理のもと生産を行う必要があります。自社栽培ならばより目の行き届いた管理ができますので、それだけ安全性が確保されます。北総愛農会は、 そのような目的で設立された農業法人です。平成14年には、エコファーマーの認定を受けております。 人にも環境にも良い農業を実践し、安全な農産物を生産している証拠ですね。なお、北総愛農会で生産された農産物は全て本体である(株)ワタナベが買い取ります。
産地開拓
千葉県だけでなく、九州や沖縄などの農協や農業法人へも生産を委託し、農産物を仕入れています。同じ品種でも産地によって収穫の時期が異なります。そのズレを活かして安定的に農産物を供給することが狙いです。 例えば牛蒡の場合、6月~10月までは鹿児島の農業法人で生産されたものを納入し、10月~翌年の6月までは千葉 で生産されたものを納入するといった具合に。千葉だけでは対応できない時期的な問題を、他産地でカバーしているわけですね。
貯蔵
冷蔵施設
自社だけでなく、他産地の農産物も大量に受け入れるとなると、当然それらを貯蔵する大規模な施設が必要となってきます。実は(株)ワタナベには、関連会社も含めておよそ2,200坪もの冷蔵施設があるそうです。6,000トン強の在庫を持てることになりますので、取引量の多い大手のスーパーに対しても安定供給が可能となります。
自社で生産した農産物の他に、県外からも大量の農産物の仕入れを行います。 それらは、冷蔵施設に貯蔵されます。貯蔵されている農産物は、産地ごと、生産者ごとにきちんと管理されています。
ところで(株)ワタナベが土物の農産物を取り扱うのには理由があります。葉物に比べて病気になりにくく、貯蔵がきくため、安定供給に適しているからです。取り扱う農産物そのものが、安定供給という目的のもと、選び抜かれたものだったのですね。
加工処理
様々な産地から集められた農産物は、(株)ワタナベにて納入先ごとに仕分けされ、 その後、大手スーパー等の納入に向けて加工処理を施します。 そうすることで、スーパーの店頭に商品をすぐに並べることが可能となります。 右の写真は加工処理の一例です。
また、スーパーに納入できない農産物に関しましては、業務用としてケンコーマヨネーズなどの食品メーカー、 その他外食産業向けに加工を施し納入しています。そのための加工を専門とする(株)ワタナベフーズが平成元年に設立されました。
トレーサビリティへの取組も実は15年前から行っていたという(株)ワタナベ。安全な農産物を安定供給するための独自のシステムが見事に出来上がっております。そのおかげで、大手スーパーやその他外食産業の要求する高い基準にも自然と合致し、大きな信頼を勝ち得ることができているのでしょう。そして、消費者からの信頼も勝ち得ていることは、みなさんの食卓に(株)ワタナベが供給している食品が自然と並んでいることから明らかなのではないでしょうか。
物を売るということ
それでも課題は常にあります。なぜなら、同じような品物はどこにでもあり、世の中に氾濫しているからです。 また、新規の取引を狙おうにも、既存の取引関係に割って入るのは至難の技です(丁度(株)ワタナベと大手スーパーとの関係のように)。 今までと同じやり方ではなく、どのような戦略を立て、どのように販路を切り開いていくか。 常に考えていかなければなりません。ただしこの課題に対して、これまでも渡辺社長は、常に悩み、考え続け、解決に向けて取り組んできました。
「物を売るのはそんなにたやすくない。私はこの道30年間常に一線に立っている。」
30年間販売に携わり、常に一線に立っている経営者から語られる、非常に重く、実感のこもった一言です。現在、とある食品メーカーに対して商品提案を行っている最中です。更なる販路開拓に向けて挑戦はまだまだ続きます。
販売に携わり30年。先を見据えることの重要性
消費者の食に対する意識も変わりつつあります。当然これまでの方法ではなく、新しい売り方を考える必要があります。常に先を見据える必要があります。今から15年も前に、市場の変化を予測し、生産履歴管理の重要性を感じ取り、 独自の物流システムを形作っていった渡辺社長。常に先を見据える力が現在の成功を生んでいる といっても過言ではないでしょう。今後もきっと驚きの仕組みを編み出し、我々消費者は知らず知らずのうちに、(株)ワタナベの商品を手に取っていることでしょう。
インフォメーション
株式会社ワタナベ
URL: http://www.watanabe-fv.com/